オンラインアシスタントサービス「タスカル」を2019年2月に始めて3年。100社以上にご利用いただくサービスになりましたが、2013年の会社立ち上げからを思い返すと、空回りしたり周囲とうまくいかなかったりと、すっ転がって傷だらけになりながらやってきた8年間でした。
私が創業したきっかけから振り返りたいと思います。
2度の交通事故。「ここからはボーナスステージ。やりたいことをやろう」
学生の頃は教員になりたいと思っていたのですが、一般企業での経験は必要だと思い、営業として建築デザインの会社に就職。そこで色々なオーナーさんと仕事をするうちに仕事が面白くなり、教員になりたいという気持ちはどこかに行ってしまいました。
独立を目指した大きなきっかけは、27歳のころに2度、交通事故に遭ったことです。両方とも「死んでいてもおかしくない」と言われるほどの事故で、人間はひょんなきっかけで死んでしまうものなのだと痛感。そこからの人生はボーナスステージ、もっとやりたいことやった方がいいと思うようになりました。
じゃあ、自分の中でエキサイティングな生き方って何かと考えたら、会社を作る、独立するということだった。もう1社webコンサルティング会社での勤務を経験し、30歳で株式会社Colorsを創業しました。
空回りしていた創業期。スタッフが増えては減りを繰り返す
最初の1年は知り合いの会社で営業代行をしながら、Colorsの事業としてwebコンサルティングをやっていました。少しずつコンサルの売り上げを引き上げ、コンサルだけで成り立つようになったらスタッフを増やす、という風にシフトして行ったのですが、ここで壁にぶつかりました。人を育てることができなかったんです。
以前勤めていた会社では「育てられた」という経験がなく、現場で死に物狂いで学びながら売り上げを上げてきました。そういう働き方しかしていないので、自分の会社でも「見よう見まねでやってくれ」「仕事を回すから気合いで乗り切ってくれ」という風になってしまう。周りと噛み合わず、スタッフが3人になっては0になり、4人になっては0に戻る、みたいなことを繰り返していました。
個の力では売れるけど、組織で勝つということが全然できていない状態。雪の上でアクセルを踏んで、タイヤが空回りしているような感覚です。タスカルの前にも違うサービスを起こしましたが、うまくいきませんでした。
妻の苦悩を目の当たりに。「働きたい」という女性に諦めてほしくない
大きな転機となったのは、2018年、第二子に先天性の心疾患が見つかり、治療のために妻と自分の地元である大阪に転居したことです。大阪と東京を毎週行き来するようになり、家族のケアを優先するためにも、働き方を変えざるを得なくなりました。
そこで始めたサービスが「タスカル」です。自分のような経営者は仕事に忙殺されている人が多いので、オンラインアシスタントというサービスに可能性を感じました。さらに、大阪に転居する際、仕事を辞めざるを得なかった妻の苦悩を見ていたことが、主に女性のリモートワーカーさんに仕事をお願いしていくきっかけになりました。
「大阪に帰ろう」となった時、僕は2秒で即決したのですが、妻は2週間悩んでいました。経営者だった僕は「こうすれば事業は続けられる」と算段できますが、勤め人の妻はそうはいかない。大好きな仕事だったので、葛藤も大きかったのだろうと思います。
妻のように、家族の事情で自分の人生を犠牲にせざるを得ない女性は少なくない。もちろん納得していればいいんですが、どこかで「働きたい」「もうちょっと仕事をしたかった」と感じている人には諦めてほしくないと強く思いました。
リモートワークでできるオンラインアシスタントの仕事なら、パートナーの転勤や子育て、妊活、介護などでこれまでの仕事を続けることが難しくなった人も働きやすいはず。挑戦できる場所を提供できるかもしれない、と考えました。実際に現在は100名以上のスタッフさんで運営をしているのですが、ほとんどが女性で全てリモートワークです。
マネジメントとしても、これまでの「頑張ってどうにかする」というようなやり方を変えました。「みなさんがすでに持っている素晴らしいものを、一部お借りしながら大きいことを成し遂げる」というようなイメージを持つようになったんです。
個性を掛け合わせて問題を解決
ただ、タスカルを始めてからもすぐにうまく行ったわけではありません。このサービス内容で月額2万5000円からという料金設定なら使っていただけるだろうと思っていたのですが、なかなかご契約をいただけず、なので1年目はやっぱり泥臭くやっていました。サービス名にQRコードまで入った「タスカルTシャツ」を作って毎日着ていたんです。電車に乗って、営業もして、交流会にも出て、できるだけ認知度を上げようとしていましたね。
少しずつご契約者さまが増え始めたところで2020年には新型コロナウイルス感染症が流行してオンラインで営業せざるを得なくなったり、マーケティングチームを発足したけど最初はうまく回らなかったり、マネージャーを任せていた人が辞めてしまったり…そういったことが重なって、かなりしんどかった時期もありました。
でもなんとかスタッフさんたちの力を借りて乗り切って、誰かのところにしわ寄せが行くのではなく分担できるようにしようと組織化を始めた。そこでだんだん理想の形に近づいてきた。特にここ1年で、みんなで会社を大きくしていくということを感じながら仕事ができるようになりました。
実はColorsという会社の名前は、人の個性と個性を掛け合わせて問題を解決して行く組織体でありたいと思って名付けたんです。創業からすごく遠回りしましたが、今はそういう方向に向かっていると感じます。
関わる人全員に、人生を総取りしてほしい
組織化したことで広報やセールスも任せられるようになり、自分の働き方も大きく変わりました。スタッフさんがそれぞれ良い方向で動いてくれていて、自分は脳みそとしての役割を担っている感覚です。意思決定に割く時間が増えました。
僕もそうだったんですが、経営者だったら24時間365日仕事しなきゃいけないって思い込んでる社長さんは多いですよね。本当は趣味に時間を使いたい、家族と一緒にいたいと思ってるのに、そういう時間を犠牲にしてしまっている。でも頑張り方を工夫すれば、仕事だけじゃなく家族や趣味の時間も取れるはずです。
僕が働き方を変えて家族との時間を取れるようになったように、タスカルを使っていただく方々も、Colorsの仕事を請け負ってくれているスタッフさんも、関わる人全員に人生を総取りしてほしいなと思っています。