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みなし残業の正しい活用方法|中小企業が取るべき対策とは

働き方改革の推進がなされる中で、多くの企業が「みなし残業」制度を採用しています。厚生労働省が実施した「平成30年就労条件総合調査」によると、みなし残業制を採用している企業割合は15.9%で、前年から増加傾向にあります。
企業としては残業代の削減になる一方で、労働者は残業時間に関わらず規定の残業時間内であれば一定の残業代しか手に入りません。よって、みなし残業に関する労働者と企業の間のトラブルになりやすいのも事実です。今回は、みなし残業制度を採用する企業のメリットとリスク、取り組むべき対策をご紹介していきます。

みなし残業とは?

みなし残業は、「固定残業」とも呼ばれ、企業があらかじめ一定時間の残業代を固定し、月給に残業代を含む支払い制度のことを言います。
たとえば「月40時間分の残業代を含む」と規定されている場合、その月に時間外労働(残業)が40時間発生しても1時間しか発生しなくても、40時間の残業があったものとして給与が支払われます。残業が40時間を超えるまで追加の残業代は出ないことになります。

みなし残業代の仕組み

労働時間に関わらず安定した収入を確保したい労働者と、残業代を抑制したい企業側双方のニーズを満たしているため、みなし残業が成立しています。
一般的にみなし残業を導入している企業では、あらかじめ給与に固定残業代を含めているため、下記の割増賃金は労働者に支払われません。
・労働基準法上の週40時間を超える時間外労働に対する割増賃金
・夜10時から朝5時までの深夜割増賃金
・休日出勤に対する割増賃金

一方で、固定残業代を払っているからと言って、いくらでも残業させていいわけはなく、みなし残業の時間外労働を超えたのであれば、別途残業代を支払う義務があります。
労働基準法38条に、みなし残業には3つの種類が規定されています。

事業場外労働制

労働時間の管理が難しい、事業場の外で発生する職務が該当します。外回りの営業職や在宅勤務(テレワーク)などの業務です。

専門業務型裁量労働制

技術者や士業など、高度な専門性を持つ職業が該当します。使用者が具体的な指示を出すことが困難であり、労働者の裁量に任せる業務が含まれます。

企画業務型裁量労働制

企業内のマーケティング、経営企画、人事、財務など、裁量を労働者に任せる企画系の職種が該当します。

上記3つそれぞれの適用条件は労働基準法の38条にて規定されています。

みなし残業のメリットと注意点

みなし残業制度は本来、企業と労働者それぞれにメリットがあるので成立しています。しかしながら、企業がこの制度を正しく活用せずに悪用していると受け取られてしまうケースも少なくありません。ここでは企業・労働者双方のメリットと注意点を見ていきましょう。

労働者側のメリット

・残業が少ない月でも安定した収入(固定残業代)が見込める

企業側のメリット

・残業代の削減になる
・みなし残業込みの月給を提示することで人材採用がしやすくなる
・企業の残業代計算が楽になる

残業代の削減に関しては、みなし残業代は割増賃金の対象外であるため、労働者が規定時間を超えて残業した場合にも時間単価が抑えられることがポイントになります。実際に、総労働時間がみなし残業の規定時間を超えると想定されている場合は、企業側にとってのコストメリットが大きいと言えます。

みなし残業制度の企業側のリスクを挙げるとすれば、従業員の残業時間が規定のみなし残業時間より少なくても一定の残業代を支払わなければならないことです。また、従業員がみなし残業時間を超えて残業をした場合、超過分の残業代を別途支払わなければいけません。

ここで、みなし残業の注意点も挙げておきましょう。企業側は労働基準法に準拠した運用を行い、従業員にきちんと理解をしてもらう必要があります。

みなし残業 企業側の注意点

・最低賃金に接触しないようにすること
仮に最低賃金未満の賃金しか従業員に支払わなかった場合、最低賃金額との差額を企業は支払わなくてはなりません。地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合には、最低賃金法で定められた罰則(50万円以下の罰金)が科せられます。

・必ず就業規則や雇用契約書に給与規定を定めること
採用募集広告や口頭で伝えたのみで契約書に規定を明記していないと、後からトラブルになる可能性があります。
・みなし残業時間を極端に長くしないこと(月45時間以内)
みなし残業時間の上限は設けられていませんが、労使間で締結する36協定の上限は1か月45時間、1年間で360時間です。36協定に抵触しないように、みなし残業時間は45時間以内に設定するのが一般的です。
・裁量労働制人材の労働時間を管理すること
技術者や士業など専門性の高い職種において裁量労働制を導入している場合に「定額働かせ放題」の社員が出てくることが懸念されます。労働時間の管理をきちんと行いましょう。

みなし残業の正しい活用方法

みなし残業制度の本来の活用目的の一つは、会社全体で残業時間の上限を設けることで、社員の残業時間の抑制を図ることです。社員の労働時間に対する意識を変えさせ、企業の長時間労働体質を変革していくことにあります。
一方で、多くの企業では、無理やり残業時間を抑えることで、かえって残業時間の発生リスクを増やすことにもなりがちです。仕事を持ち帰り自宅で残業したり、残業時間の過少申告をしたりする社員が出てきます。その結果、社員の生産性の低下、体調不良、過労死などのリスクも発生するでしょう。

みなし残業制度を導入することで、労働者に残業時間の管理をさせるだけではなく、何故残業が発生するのかを突き止め、ワークシェアリングや業務削減・効率化ができないかを考え、実践していく必要があります。管理者に残業時間を意識させることも重要です。

中小企業が取るべき対策とは

ここでは、労働者に不利益を与えないために中小企業が取るべき対策を紹介します。みなし残業を長年採用しているので関係ないと思わずに、改めて下記の対策が実施できているかチェックしてみましょう。

・就業規則や雇用契約書に規定を設けているか
・労働基準法に則った就業規則になっているか
・労働基準法に定められた最低賃金に抵触していないか
・就業規則にみなし残業代がどの割増賃金に該当するかを明記しているか
・給与明細にみなし残業代の金額と残業時間を記載しているか
・従業員へ繰り返し制度を周知し、同意を得ているか

みなし残業なので給与明細に残業時間を記載していない、あるいは残業時間が管理されていない会社はいますぐ対策を講じてください。併せて、経営者や人事部門から従業員に詳細の説明を行うことで、制度の理解と安心感を与えることが重要です。

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まとめ

この記事では「みなし残業」こと固定残業代制度についてご紹介しました。一見、企業にも労働者にもメリットがある制度に見えますが、正しい活用方法を実践しないとトラブルの原因になりかねません。社員の業務量と賃金制度の見直しは定期的に行うことを推奨します。
本来の目的である社員の労働時間と残業代の削減の一つの選択肢として、業務の外注化(アウトソーシング)があります。社内の人事・労務部門で残業時間管理と是正をしようとすると、大きな労力がかかりコア業務に集中できなくなることがあります。タスカルでは採用コストなし、専門チームで業務への対応が可能です。ご検討されている企業様はお気軽にお問い合わせください。

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