リテールメディアとは、ECサイトやアプリ上の広告、店舗でのデジタルサイネージなど、小売業者が独自に保有している広告媒体や配信システムのことを指します。
購買データを活用してユーザーのニーズにあわせた訴求ができるため、注目を集めています。
今回は、リテールメディアの概要や種類、注目される理由、活用事例を解説します。
リテールメディアとは
リテールメディアとは、小売業者が保有しているECサイトやアプリ上の広告や、店舗でのデジタルサイネージなど独自の広告媒体や配信システムのことです。
広告主は主にメーカーやブランドで、ECサイトやアプリ、店舗に訪れた購買意欲の高い消費者に対してアピールできます。
商品の購入履歴や顧客情報などの購買データや、クーポンやお買い得情報などを配信するアプリでの行動データなど独自に収集したデータをもとに、顧客に適した広告を訴求できるなどがメリットです。
またリテールメディアへの広告出稿が拡大していけば、小売業者は新たな収益を得ることもできるようになります。
リテールメディアが注目される背景
リテールメディアが注目されている背景を紹介します。
脱クッキーによる影響
CookieとはWebサイトの履歴や入力情報などを記録するファイルのことを指します。なかでも「3rd Party Cookie」は、Webサイトやアプリなどを横断した場合も追跡が可能です。
近年、個人情報保護の観点からも「3rd Party Cookie」の規制や段階的な廃止が進んでいます。そのため「3rd Party Cookie」に代わり、購買データを活用してパーソナライズした広告配信ができるリテールメディアに注目が集まっています。
小売業界のDX推進
アマゾンや楽天グループのようなEC系のリテールメディアでは、これまで広告事業に取り組んできました。一方スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの実店舗を運営する小売業者では、リテールメディアの展開が進んでいません。
しかし、DXの推進によりデジタルサイネージやアプリなどの導入や、購買データと顧客情報の連携によって、リテールメディアが展開されるようになりました。
例えばドラッグストアチェックのツルハホールディングスでは、顧客情報と購買データを紐付けたID-POSを活用した広告サービス「ツルハグループAds」を運用し、リテールメディアを推進しています。
参考:アドタイ|ツルハホールディングスと創り上げるリテールメディアの推進と店舗DX
市場規模の拡大
引用元:CARTA HOLDINGS、リテールメディア広告市場調査を実施
CARTA HOLDINGSとデジタルインファクトの調査によると、日本では2023年のリテールメディアの広告市場は3,625億円を見込んでおり、2027年は9,332億円に推移すると予測されていて、今後拡大傾向にあることが分かります。
なお米国広告事業のシェア率では、GoogleやFacebookなどを運営するMetaに続き、アマゾンが3位に入り、リテールメディアにより広告事業を拡大させています。
新たな広告事業の市場として、リテールメディアの注目度が高いといえるでしょう。
リテールメディアの種類
リテールメディアの種類を詳しく解説します。
デジタルサイネージ
店頭や店内にあるデジタルサイネージに広告を掲載することで、購買意欲のある来店者に商品を訴求できます。
デジタルサイネージはターゲットや季節、時間などにあわせて表示する商品を変更することが可能です。音声や動画も使用できるため、紙のポスターに比べて印象に残りやすいメリットがあります。
ECサイト
運営しているECサイトに広告を掲載できます。
例えば、商品の閲覧や購入履歴にあわせて関連商品が表示される「こちらの商品もおすすめ」などの掲載枠に、商品を掲載することが可能です。興味や関心のあるユーザーにアプローチして、認知拡大や商品購入を促せます。
アプリ
チラシ情報やクーポンを配信しているアプリがあれば、アプリ内に広告を掲載してユーザーに商品を訴求できます。
アプリの利用ログなどの情報から、ユーザーの好みにあう商品の広告を配信できるわけです。また店舗にBeacon端末を設置していれば、位置情報と連携してアプリのプッシュ通知機能で来店している消費者にアピールできます。
ショッピングカート
デジタル端末を付けたショッピングカートを活用して、買い物中の来店者に商品を訴求できます。
例えば九州を中心に店舗を展開しているトライアルカンパニーは、デジタル端末を付けたスマートショッピングカートを店舗に導入している企業です。カートに入れた商品にあわせてパーソナライズした商品の提案や、クーポン配信を行っています。
参考:ダイアモンドチェーンストアオンライン|狙いは広告収入じゃない!?電通とタッグで進める、トライアルのリテールメディア 戦略とは
リテールメディアの活用事例
リテールメディアの活用事例を2つあげて紹介します。
ウォルマート
米国のリテールメディアの広告市場を牽引しているのが、大手スーパーマーケットのウォルマートです。22年度の売上高は27億ドルで、全体の利益に占める割合は5%を超えています。
月間約1億3000万人が利用しているWebサイトのデータを活用して、広告事業を展開しています。利用者に適した広告をECサイトやアプリ、デジタルサイネージなどで配信し、利用者の来店体験向上につなげている事例です。
参考:日経X TREND|ウォルマートのリテールメディア急伸の理由 日米市場に7つの違い
セブンーイレブン・ジャパン
セブンーイレブン・ジャパンは、2022年にリテールメディア推進部を発足してリテールメディアの活用に力を入れています。
これまで顧客情報と購買データを紐付けておらず、約1800万人の利用者の購買データをうまく活用できていませんでした。そこで購買データとカードIDの顧客情報を紐付けてデータ管理する体制を構築したことで、顧客の購入履歴などにもとづいてアプリ上で広告を配信できるようになりました。
参考:日経X TREND|セブンもイオンも参入 広告新市場「リテールメディア」の衝撃
リテールメディアを活用して売上拡大を目指そう
リテールメディアは、今後拡大が見込まれる広告市場です。購買データと連携してユーザーに適した広告を表示したり、購買意欲の高い来店者に訴求できたりするメリットがあります。
商品やサービスを訴求する方法のひとつとして、リテールメディアの活用を検討してみてはいかがでしょうか。