新型コロナウイルスの影響により、リモートワークへの移行が劇的に加速しました。今ではあらゆる組織がSlackやMicrosoft Teamsなどといったオンラインのビジネスチャットツールに移行しています。
それは大企業だけでなく、タスカルをご利用いただいているまたは利用を検討されている中小企業も例外ではありません。
ところが、
- SlackとMicrosoft Teams、どっちがいいのだろうか?
- SlackとMicrosoft Teamsの違いがよくわからない
などといった疑問はお持ちではないでしょうか。
そこでこの記事ではSlackとMicrosoft Teams、どちらが中小企業にとって良いビジネスチャットツールなのかについて解説します。
ビジネスチャットツールの利用状況
コロナ禍の影響により、従業員は従来の職場ではなくリモートでの仕事が一般的となりました。そんな中、SlackとMicrosoft Teamsは世界で一二を争うシェアの高いツールです。
そこで各ツールが具体的にどれだけ普及しているのかを見ていきましょう。
中小企業への普及率シェア
まずは全世界のビジネスチャットツールの市場シェアを見ていきましょう。
SlackとMicrosoft Teamsの2014年~2019年の全世界のアクティブユーザーを比較すると、2018年まではSlackが多かったのに対し、2019年にはMicrosoft Teamsが大きく引き離しています。
出典:Statista
ところが、アメリカのスタートアップのような小規模の組織では、Slackのシェアの方が高いことがわかりました。以下のデータはアメリカのスタートアップ200社のデータをグラフ化したものですが、Slackが常にMicrosoft Teamsを上回っていることがわかります。
出典:Vox Media
SlackとMicrosoft Teamsの基本情報
SlackとMicrosoft Teamsの具体的な違いを比較する前に、まずはそれぞれのサービスについて簡単にご紹介します。
Slackとは
Slackはアメリカ・サンフランシスコにあるSlack Technology社が提供するビジネスチャットツールです。2013年に写真共有サイトFlickrの創始者として知られるスチュワート・バターフィールドが立ち上げたことで知られています。Slackの名前の由来は”Searchable Log of All Conversation and Knowledge(すべての会話と知識の検索可能なログ)”の頭文字から取っています。
グループチャットやダイレクトメッセージに加えて、Slackはファイル共有機能も存在し、Twitter、Zoom、Googleドライブなどの様々なアプリやサービスと統合することが可能です。
Slackは元々バターフィールドがオンラインゲームの開発の際に、社内のコミュニケーションを行うためのツールとして使われていました。Slackは当初「電子メールの置き換え」に努めていましたが、単なる電子メールの代替品ではなく、オーディオやビデオサービスなどの機能を長年にわたって追加してきました。
Microsoft Teamsとは
Microsoft Teamsとはマイクロソフトが提供するコミュニケーションツールです。2017年に世界中でサービスが開始されました。
実は2016年3月にMicrosoftがSlackの買収を検討していたものの、ビル・ゲイツが反対しMicrosoft Teamsの前身であるSkype for businessの改善を行う方針としていました。その後、Slackに対抗する形で2016年11月に正式にMicrosoft teamsを発表した経緯があります。
Microsoft Teamsは、メッセージ、音声およびビデオ会議、通話、ドキュメント共有など、リモートワークを実現するためのツールを提供します。また、Microsoft TeamsはWord、Excel、PowerPointなどのMicrosoft製品と統合することができます。例えば、Microsoft Teamsを介すと一つのWord文書を複数人で同時編集することが可能になります。さらに、Microsoft Teamsはマイクロソフトが提供する企業コミュニケーションのプラットフォームであるMicrosoft 365の機能のひとつに含まれています。
一方、マイクロソフトは2019年からスタートアップ企業の支援プログラム「THE CONNECT」を開始しており、既に132社を支援し、スタートアップ企業に対するアプローチを強化しています。
SlackとMicrosoft Teamsの比較・違い
SlackとMicrosoft Teamsはビジネスチャットツールであり、チャット、Web会議ができることは認知されていますが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか?
これより、SlackとMicrosoft Teams具体的な機能や価格の違いを見ていきましょう。
SlackとMicrosoft Teams 機能比較
まずは機能面の比較をします。下記の表を見てもわかる通り、チャットツールの域を超えて、ビデオ会議やファイル共有などといったビジネスに必要な機能が備わった「コミュニケーションツール」だといえます。
主な機能面では大きな違いはないものの、Microsoft Teamsの方が「ビデオ録画」「背景の変更」「会議の参加人数」といった点でビデオ会議機能が充実していることがわかります。ところが、既に多くの企業がビデオ会議にZoomなどといった別のツールを使用していることから、これが決定的な問題になることはないでしょう。
また、外部の組織のユーザを招待する際、Microsoft TeamsはAzure ADによる認証が必要となるため、Slackよりも処理が複雑だとされています。
特徴 | Microsoft Teams | Slack |
新たなチームまたはチャンネルの設定 | ○ | ○ |
ブライベートチャット/ダイレクトメッセージ | ○ | ○ |
ファイル共有 | ○ | ○ |
画面共有 | ○ | ○ |
ビデオ通話/音声通話 | ○ | ○ |
メッセージ・ファイル閲覧 | ○(チーム固有のファイルの参照可) | ○ |
サードパーティツールとの統合 | ○ | ○ |
通話の録音 | ○ | × |
ビデオ通話時の背景の変更 | ○ | × |
通話履歴の参照・生成 | ○ | × |
カレンダー | ○ | ×(サードパーティの統合でのみ使用可能) |
チームまたはチャンネルに外部ユーザーの招待 | ○(Azure ADにて管理) | ○ |
メンバーの最大数 | 無料プラン:500,000人 有料プラン:無制限 | 無制限 |
会議の最大人数 | 無料プラン:100人[*1] 有料プラン:10,000人 | 無料プラン:1人 有料プラン:15人 |
会議時間 | 無料プラン:60分[*1] | 無制限 |
統合できるツール数 | 無料プラン:Word、Excel、PowerPointの無料版 有料プラン:900以上のツール | 無料プラン:10個のツール 有料プラン:900以上のツール |
*1:2021/7/23時点では期間限定で会議時間が24時間、最大接続人数は300人です。
SlackとMicrosoft Teams 価格比較
SlackとMicrosoft Teamsのどちらかを選ぶ際、価格設定も重要です。
まずはSlackの有料プランを見てみましょう。Slackには「プロ」「ビジネスプラス」「Enterprise Grid」の3種類があります。有料プランに入る大きな利点としては、メッセージの履歴の制限が無くなること、無料版では1対1の通話のみ対応だったのが最大15人のグループ通話が可能になること、Slackでの社外組織とのコミュニケーションが可能になる点が挙げられます。
各プランの詳細については、こちらをご参照ください。
プラン名 | 月額利用料 | 主な特徴 |
プロ | 年払い:月額\850 月払い:月額\960 /1アクティブユーザー当たり |
|
ビジネスクラス | 年払い:月額\1,600 月払い:月額\1,800 /1アクティブユーザー当たり |
|
Enterprise Grid | 要問合せ |
|
つぎにMicrosoft Teamsの有料プランを見てみましょう。有料プランはMicrosoft Teamsとしてではなく、Microsoft 365やOffice 365の有料サービスに加入することでMicrosoft Teamsが利用できる形になります。
有料プランに入ると、他のデスクトップ版のOfficeソフト(ExchangeはBusiness Basic、Word、Excel、PowerPointはStandard以上)が利用できる点と会議の録音などビデオ会議機能の拡充される点が大きな特徴です。
各プランの詳細についてはこちらをご確認ください。
プラン名 | 月額利用料 | 主な特徴 |
Microsoft 365 Business Basic | 年払い:月額\560 /1アクティブユーザー当たり |
|
Microsoft 365 Business Standard | 年払い:月額\1,360 /1アクティブユーザー当たり |
|
Office 365 E3 | 年払い:月額\2,170 /1アクティブユーザー当たり |
|
SlackとMicrosoft Teamsの詳しい特徴
ここまで機能の概要と価格設定について網羅的に比較してきましたが、もう少し踏み込んでそれぞれのサービスの特徴を見ていきましょう。
Slackのチャットボット機能「Slackbot」
Slackにのみ、存在する機能としては「Slackbot」と呼ばれるチャットボット機能があります。Slackの使用方法や予め設定したスクリプトの実行、リマインダーの設定などを対話式で行うことが可能です。
Microsoft Teamsにはこのような機能は現状存在しません。
Slackはシステム開発でのデファクトスタンダード(業界標準)
ビジネスチャットツールを説明する上でもう一つ重要な要素としては「利用者層」の観点です。Slackは2013年のリリース以降、ITエンジニアがよく利用するGitHubと呼ばれるプログラムコードや設計書などを管理するツールやTrelloといったプロジェクト管理ツールとの連携が容易であることから、システム開発の現場で一般的なビジネスチャットツールとして利用されてきました。そのため、多くのITエンジニアが「Slackに使い慣れている」という事実があります。そのため、システム開発を行うエンジニアにとっては、Microsoft TeamsよりもSlackを好む傾向があるかもしれません。
なお、Microsoft Teamsも2020年9月にGitHubとの統合が可能となっており、着々と領域を広げています。外部ツールとの連携においてSlackに追従すべくMicrosoft Teamsの機能の拡充を図っています。
SlackとMicrosoft Teamsの使い分け
こんな企業はMicrosoft Teams向き
既にMicrosoft 365やOffice 365を導入されている企業にとっては、Microsoft Teamsを利用することが最適な選択です。なぜならばMicrosoft 365やOffice 365を既に採用していれば、追加コストなしでMicrosoft Teamsを利用することができるためです。
また、大規模なオンラインイベントを開催するような企業にとってもMicrosoft Teamsの方がよいでしょう。Microsoft Teamsを利用すると、何百人もの方が参加できる会議やイベントを主催することができます。Slackではビデオ会議に参加できる人数に制限があるため、大人数での会議を開く事すらできません。
こんな企業はSlack向き
外部の事業者や企業とチャットでのやり取りが多い企業はSlackの利用が望ましいでしょう。SlackはSlack Connectという機能を用いることでMicrosoft Teamsと比べて容易に社外のメンバーをグループに入れることが可能です。
また、既にGoogle Workspaceを利用している企業についても、Slackを選択することが望ましいです。仮にMicrosoft 365の有料プランに入ることでGoogle Workspaceとの機能重複が発生してしまうためです。
システム開発を行っている企業も、多くのエンジニアがSlackに使い慣れているという観点で、Slackを利用することが望ましいです。
結論
中小企業に向いているビジネスチャット(コミュニケーション)ツールですが、近年はMicrosoft Teamsが無料プランの拡充、中小企業へのアプローチを強化している影響があり、明確にはどちらとも言えない状況です。しかしながら、以下の条件に合致する場合は、Slackの利用の方が望ましいのではないでしょうか。
- 外部の会社とのメッセージのやり取りが多い
- 普段ブラウザ上で業務をされている企業
- GoogleドキュメントやGmailなどGoogle製品を普段から利用されている企業
- 取引先がSlackを利用している
なお、タスカルではオンラインアシスタントを利用いただいているお客様に対してSlackを導入し、社内のコミュニケーションやタスク管理における課題を解決してきた実績があります。タスカル社内でも利用されている実績のある運用ノウハウを提供することで、
- コミュニケーションルートの改善
- 情報の整理
- チャットツールの運用ルールの整備
などといったことが実現できます。ビジネスチャットツールの導入を検討されている際は、併せてタスカルのオンラインアシスタントの活用もご検討ください。詳しい活用事例については以下の記事をご参照ください。