深刻な人手不足が叫ばれている昨今、注目を集めているのがBPOです。
本記事ではBPOについて、混同されがちなアウトソーシングとの違いや、メリット・デメリットなどをご紹介します。
BPO企業を選ぶ際のポイントも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
BPOとは?
BPOとは「ビジネス・プロセス・アウトソーシング」の略称で、企業が自社の業務の一部を外部の専門的な企業に一括で委託する経営手法の1つです。
BPOで企業の利益に直結しないノンコア業務や定型業務を一定期間外部に一括で委託することで、自社従業員がコア業務に注力できる環境を整備します。その結果、コア業務の品質向上や事業のグロース、企業の売り上げ向上をより高い角度で目指すことができます。
BPOによって自社の事業を成長させるうえでノウハウを貯めるような有益性は低いものの、必要な業務を高いクオリティで処理することが可能です。そのためコストを削減しながら高品質な業務を効率的に行え、企業が抱える人材不足や経費削減などの課題解決につながりやすいのが特徴です。
経理BPOの需要が高まっている
昨今BPOは多くの企業で導入が進められており、市場規模も年々大きくなっています。その中でも、特に経理業務をBPOに依頼するケースが増えているのが最近の傾向です。
矢野経済研究所の調査によると、2021年度におけるBPO市場規模は前年比3.0%増、経理BPOの市場規模は前年比4.3%増を記録しています。
今後もBPOの需要はますます高まると予測されており、対応業務の範囲も増える可能性が高いでしょう。
出典:矢野経済研究所|2021年度のBPO市場規模は前年度比3.0%増の4兆5,636億9,000万円、2022年度もプラス成長を予測
アウトソーシングとは?
アウトソーシングとは日本語に訳すと外部調達という意味になり、社外から人やサービスなどのリソースを調達して事業運営や企業経営を強化することを指します。
アウトソーシングという言葉が使われ始めた頃は会社法、税務や財務など専門的な分野の業務で士業の方に任せた方が効率的で安く済む業務などを示していました。
しかし、現在はそれら士業に依頼する仕事以外にも社員がコア業務に注力するのに邪魔になる総務や経理、人事労務などの事務作業も含めアウトソーシングと呼ばれています。
アウトソーシングは社外の力を有効的に使うことができるため、少ない社員数で効率的に事業成長、売り上げ向上が目指せます。
BPOとアウトソーシングの違い
ここまで、アウトソーシングとBPOの概要を解説しましたが、「結局何が違うの?」と思われた方も多いでしょう。
実際にBPOとアウトソーシングは同一に考えられることが多いですが、それぞれ異なる特徴を持っています。
アウトソーシングは広義の意味で使われることが多い一方、BPOは専門的なノウハウを必要とする業務を外部へ一括委託することを示すため、BPOはアウトソーシングの一部であると言えるでしょう。
またアウトソーシングを一言で表すと、「自社で行っていた業務の一部を外部の会社/人材に代行してもらうこと」を指し、BPOは「経営戦略として業務を外部に一括で委託すること」を指します。
シンプルに作業だけを任せたり、業務の一部を任せたい場合はアウトソーシング、業務改善や課題解決が目的、もしくは業務を一括で任せたい場合はBPO、と区別して活用しましょう。
BPOの対象業務
BPOと相性の良い業務にはバックオフィスや経理など、さまざまな業務があります。アデコ株式会社の調査によると「IT・運用保守・web」を筆頭に、「データ入力・マニュアル作成・翻訳」や「事務・総務・人事等のバックオフィス」が特に活用が進められているようです。
出典:アデコ株式会社|【アンケート結果】アウトソーシングの導入状況・メリット・デメリットなど
ここではバックオフィスと経理・人事、マーケティングにおける業務を詳しく紹介します。
バックオフィス業務
正確性が求められ時間も取られがちなデータ入力。BPOサービスを活用すれば大量のデータでも短時間に入力が可能です。
もちろん少量のデータも対応可能で、入力に留まらず内容のチェックもしてくれます。他にも、書類の発送、データの管理、問い合わせ対応など幅広い業務に対応しているBPO事業者があります。
書類作成業務でBPOを活用する
書類の文章作成は一見簡単にも見えますが、意外と意味が伝わらない文章やロジックが崩壊している文章を作りがちです。
アウトソーシングを行うことで、プロの高度な編集やライティング技術を活用して高品質な書類を作成することができます。
また、書類の内容が専門的な知識を要する場合、社内で行うよりも一連の書類作成業務を外部に依頼することでコストを削減しながら高品質な業務を実行することが可能です。
書類作成業務のアウトソーシングに関して、どのような業務を依頼できるのかやメリット・デメリットなどは別記事「書類作成を外注して業務効率化!おすすめ書類作成代行サービス7選」にて解説しています。
データ入力・管理業務でBPOを活用する
データ入力は時間がかかる上に単純作業に分類されることが多く、少人数の企業ではタスクが圧迫される原因となる費用対効果の低い業務の1つではないでしょうか。このようなデータ入力や管理業務はBPOが効果的です。
その他に「RPA」を活用する方法もあります。RPAは「Robotic Process Automation /ロボティック・プロセス・オートメーション」の略で単純作業を自動的に行ってくれるシステムです。
書類の不備チェックやデータ入力作業など決められた業務を繰り返すことを得意としているため、人的なミスなくコスト削減をしてデータ入力が可能となります。
RPAについての詳細や導入のメリットに関しては別記事「RPAで生産性が向上!RPAに効果的な業務とメリットとは【最新版】」をご覧ください。
経理・人事部門の業務
台帳記入、領収書、請求書、会計処理などの経理に関する業務は、ある程度の知識が必要なためBPOサービスを活用することで雇用課題の解決や人材費削減が可能になります。人事部門の業務は、主に労務管理などの内部向け業務と、採用などの外部向け業務に大別できます。
BPOサービスはその両方を対象としており、具体的には従業員の給与・賞与計算や社会保険、年末調整、福利厚生などの手続き、採用活動の代行などが挙げられます。
経理業務でBPOを活用する
経理業務は社員数の少ない中小企業などでは1人で行っている場合もあり、ハードワークになっていることも多々見られます。
また、社内にノウハウを貯める優先順位も低いため、BPOを活用して一連の業務フローを外部に任せる効果が高いです。社内での経理業務が重荷になっている企業には特におすすめです。
経理業務のアウトソーシングを行う際のフローや先行事例、注意点などに関しては別記事「中小企業が経理をアウトソーシングするべき理由と依頼先を決める基準」にてご紹介しています。
人事業務でBPOを活用する
人事労務は人事業務の採用や人事戦略の設計や社員研修、労務の給与計算や勤怠管理から社会保険に関する手続きなど幅広くあります。
人事戦略から採用、研修などは自社内でノウハウがない場合、設計から実行までに時間がかかってしまう上にクオリティが高いとはいえない場合も多く見られます。
そのため、人事業務にリソースを割くことが難しい企業にとって一連のフローをBPOすることはとても有効的でおすすめです。
また、その際に労務業務も一緒に委託できる委託先もあるため、人事労務の業務をまとめて依頼できるのもポイントといえます。
人事労務でアウトソーシングできる業務の詳細や行うメリット・デメリット、料金の相場に関しては別記事「人事業務・採用人事(RPO)をオンラインアシスタントに依頼するメリット、おすすめサービスを紹介」をご覧ください。
マーケティング部門の業務
顧客管理から市場動向の調査まで、マーケティング部門で行う業務を委託することができます。BPO事業者によっては、ビジネスプロセスにおける課題を明確にした上で、的確な解決方法を提供してくれます。
効果的なマーケティング戦略が重要な現代において、当該分野の専門家の力を借りるのは有効であり、専門性が高くBPOを利用することで効果を最大化することができます。
BPOのメリット・デメリット
BPOには単純な作業だけでなく、業務改善まで請け負ってもらえるという点以外にも多くのメリットが存在します。
一方で、良い点ばかりだけでなく、BPOの活用にあたって十分に考慮すべき注意点も存在します。
この章では、BPOについて知っておくべきメリットとデメリットについて解説いたします。
BPOのメリット
まずはBPOを導入した際のメリットをみていきましょう。
業務にかかる時間やコストの削減
BPOで業務を一括して外部の専門的な企業に依頼すると、定型的な業務などやり方が決まっていて時間がかかる業務を外部の企業に丸投げできます。大幅な業務時間の削減により他の業務に時間を割きやすくなり、業務も効率化されます。
また専門的な知識が必要になる業務を依頼することで自社の社員を教育する時間が不要となり、教育コストがかからないのもメリットといえます。
BPOにより人件費や教育コストを削減できるため、全体的なコストを抑えられやすいでしょう。
専門業者なので業務がスピーディーで顧客満足度も向上する
BPOを提供している企業は複数あり、それぞれ得意分野や、高度な専門領域を掲げています。委託する業務によっては、専門的なスキルや知識を持つ人材が担当し、自社にはない専門知識やノウハウを活用できることもあるでしょう。その場合は自社で担うよりも業務の質が向上し、専門性の高いパフォーマンスが期待できます。
コア業務に集中することで収益も向上する
BPOによる業務の効率化は、従業員のリソース確保につながり、リソースをコア業務に充てることができます。BPOによってノンコア業務におけるコスト削減が進み、よりコア業務へと経営資源を投入できるため、結果的に利益の向上が期待できます。
社員の部署・業務変更や退職時のリスクを軽減できる
終身雇用の文化が軽薄になりつつある現在、人材の流動性が増すことで社員の退職も大いに考えられます。退職者が出た時に社員数が少ない中小企業ほど退職者に代わり業務を負担したり、権限の移行が行われたりすることが多いのではないでしょうか。
その際、ノンコア業務や定型業務など優先度の低い業務ほど処理を後回しにして、最終的に未処理のノンコア業務が溜まってしまいやすくなります。
このような社員の退職やそれに伴う業務移行で発生する引継ぎ漏れのリスク、ノンコア業務の未処理になりやすいという課題をBPOを行うことで未然に防ぐことが可能です。
中小企業がアウトソーシングを導入する意義や導入に向いている企業などについては別記事「アウトソーシングを導入するメリットと中小企業の慢性的な悩みを解消」にて解説しています。
BPOのデメリット
続いて、十分に留意すべきデメリットを解説します。
業務の自社対応が困難になる
BPOを導入し全ての業務をBPO事業者へ丸投げしてしまうと、細かい業務手順の変更やノウハウを自社で管理・蓄積することが難しくなります。BPO事業者に業務を一任するのではなく、定期的に進捗状況や業務に関するさまざまな情報を把握しておくことが大切です。
セキュリティリスクへの対策
データ入力や顧客管理等の業務においてBPO事業者に個人情報などの重要な情報を渡すことがあります。万が一重要情報が外部へと流出してしまった場合、それがBPO事業者が行ったことであっても、発注元企業の社会的責任が問われるおそれがあります。セキュリティ品質基準を満たした業者を選定し、リスクを認識しておきましょう。
BPO企業を選ぶ際のポイント
BPO委託先を選ぶ際、いくつかチェックすべきポイントがあります。特に以下の点は、どの業務を依頼する場合でも最低限確認しておきたいポイントです。
- 企業規模
- BPOの受託実績数
- 業務に関する専門性
- サービス範囲
- コストと納期のバランス
- 情報セキュリティ対策の堅牢さ
上記の点を踏まえ、BPO会社を複数社、比較・検討することをおすすめします。
BPOを効果的に活用するためのポイント
BPOを効果的に活用するためには、前の章で解説したデメリット踏まえて、体制を整備することが重要です。ここでは、BPOの効果を最大限に引き出すための3つのポイントを解説します。
業務振り分けやマニュアル策定などの準備を行う
まずは導入目的を明確にし、組織内の課題や委託する業務の範囲を細かく洗い出しましょう。その上でBPO企業に依頼する業務の振り分けを行い、適宜マニュアルを策定するなどの準備を行います。
ただし業務の切り分けは自社だけで行うのは難しい場合もあるため、最初は大まかに振り分けを行い、細かい部分は委託先の企業と相談しながら進めると良いでしょう。
信頼の置ける企業を選ぶ
昨今では企業へのコンプライアンス遵守の流れは厳しくなっており、機密情報の漏えいなどの事態が発生すると事業継続に影響が出る可能性が少なくありません。
そこでBPO委託先を選ぶ際は情報セキュリティ対策を取っているのはもちろん、実績や企業規模等を踏まえ、信頼の置ける企業かどうかを確認することが大切です。
企業と定期的に密なコミュニケーションを図る
業務をBPO委託先に任せきりにしてしまうと、業務を進めるうちに認識の齟齬が生まれてしまったり、最終的に自社が期待した効果が得られなかったり、といった結果になりかねません。
委託したから任せきりにするのではなく、定例で進捗を確認しあったり、自社での細かな方針の変化などを共有したりすることを習慣にしましょう。
そうすることでBPOの効果を高められるだけでなく、仮にBPO委託が終わった後もその効果を自社で保っていくことにもつながります。
まとめ|BPOで業務効率化と収益アップ
BPO概要やメリット、BPO企業を選ぶ際のポイントなどをご紹介しました。BPOを活用することで社内の業務時間やコストを削減できます。また、企業内リソースに余裕ができ、コア業務に集中できるようになって収益向上にも繋がるでしょう。
BPOを提供している企業は、それぞれ得意分野が異なります。BPO企業選定の際はその違いも加味しながら、自社にピッタリのBPO企業を選んでください。