会計ソフトを活用すれば、法人決算に税理士は必要ないのか?

巷間の意見で「法人決算を経営者が自ら行うのは難しい」や「税理士に依頼する方が手間もかからず効率的だ」といった話はよく耳にするところです。

しかし、事業規模がそれほど大きくない段階では資金的なゆとりがないというのも事実です。できることは自分でやりたいというのは自然な考え方かもしれません。しかも近年では会計ソフトが発達し、専門的な知識がなくとも経理事務を自動で行える環境が整いつつあります。

これを受けて本稿では次のような疑問に答えを示します。

会計ソフトを活用すれば法人決算を行うのに税理士は不要なのか?

自社で法人決算を行うとどのくらいの負担やリスクがあるのか?

このような疑問は思いの他、多くの方がお持ちです。本稿を通じて法人決算への理解が深まれば幸いです。

法人決算とは?

決算とは 一定期間の収入と支出を計算して利益を決定する手続きです。一定期間とは1年間ですが、その始期と終期は会社が自由に決められます。一番多いパターンは4月から始まり3月までを一定期間とする会社で、3月決算などと呼ばれます。スタートを何月にするかは会社の任意に任されるので何月スタートでも構いません。

 法人決算の目的は3つあります。1つ目は納税です。税務申告及び納税のための計算の基礎となります。2つ目は報告です。 株主や銀行に財務状況を報告しなければなりません。3つ目は分析です。決算で明らかになった財務状況を分析して今後の経営の指針とします。

法人決算の大まかな流れ

記帳

大前提として日々の取引を一つ一つ正確に記帳することがあります。事業を行っていると記帳すべき情報も膨大です。記帳はできるだけその日のうちに行うのが決算前に慌てないために必要でしょう。

試算表の作成

決算前にはその元となる試算表を作成します。試算表とは記帳が正しくできているかをチェックする計算表です。ここで決算資料の元となる資料やデータを確認します。具体的には①預金通帳、②領収書、③購買明細(クレジットカードの使用履歴やECサイトでの購入履歴)、④給与明細、⑤請求書です。

決算整理仕訳

次に決算整理仕訳を行い、必要資料について会計ソフトに一つ一つ入力していきます。決算整理仕訳とは、決算書作成の前に期内の未処理の取引を整理する手続きです。

決算書類の作成

非常に手間のかかる作業を経て最終的に決算書類としてまとめられます。

決算書類とは会社法によると次の4つが規定されています。具体的には①貸借対照表(B/L)、②損益計算書(P/L)③株主資本等変動計算書、④個別注記表です。

決算書は作成して終わりではなく、取締役会と株主総会での承認が必要です。承認を経て初めて決算書の内容が確定するのです。

税務申告

決算書の内容確定を受けて法人税申告書を作成します。次は行政(税務署、都道府県の税事務所)への書類の提出です。法人は5つの税金を申告しなければなりません。具体的には①法人税、②消費税、③法人事業税、④都道府県民税、⑤市町村民税です。

申告期限は事業年度の翌日から2カ月以内となっています。3月決算の会社であれば5月末までに申告しなければなりません。1年間の取引をまとめて申告するにはあまりにも短い期間です。

書類の保管義務

このように煩雑な手続きを経て当該年度の決算は完了します。ただ、油断できないのは書類の保管義務です。決算書や仕訳帳は会社法に基づき10年の保管義務が課されています。領収書や請求書については保管義務は7年間です。

会計ソフトを導入すれば税理士は不要なのか?

税理士が不要かどうかについて、たしかに会計ソフトを使いこなして正しく税務書類を作成できれば税理士は不要でしょう。けれども「作業量が多すぎる」とか「税務知識が難解で理解できない」といった場合には税理士に依頼する方が無難です。

ただ、一律に結論を出すのは難しく、自社の置かれた状況に応じて結論が分かれます。

税理士が不要な場合としては、事業規模が小さく年間の売上が1千万円に満たない事業者であったり、経営者のITリテラシーが高いことがあります。

理由は小規模な事業者であれば税務調査の入る可能性が低かったり、節税対策の効果も小さいためです。ITリテラシーが高ければ会計ソフトを使いこなすことも容易でしょう。このため税理士を依頼するメリットはあまりないといえます。

税理士が必要な場合としては、年間で1千万円以上の売上がある事業者であったり、ITリテラシーがあまり高くないことがあります。

理由は税務調査が入る可能性が高く、節税対策の効果も大きいためです。会計ソフトを使うことに抵抗があれば自力で税務会計上の手続きを行うのは難しいでしょう。このため税理士を依頼するメリットは十分にあるといえます。

自社で決算業務を行うメリット・デメリット(負担やリスクにも言及)

自ら決算を行う場合に以下ようなメリット・デメリットがあります。負担やリスクも勘案しなければならず、決算業務をインハウス化するためには慎重な検討が必要です。

メリット

税理士報酬を削減できる。

決算と税務申告の制度を理解できる。

自社の数字を把握し、財務状況を理解できる。

上記のメリットを以下で説明します。

①税理士報酬を削減できる。

従来、税理士に依頼していた業務を自社で行えば税理士報酬を削減できます。事業が小規模のうちは毎月の仕訳入力は自分で行い、税理士に依頼するのは決算のみというケースが一般的です。しかし、決算まで自分で行うと一層のコスト削減になります。

②決算と税務申告の制度を理解できる。

自分で決算と税務申告を行うと、制度の勉強を通じて税務会計の知識が大幅にアップします。法人決算を自分で行うためには複式簿記の知識や源泉徴収への理解、消費税の納税義務の判定などの知識が必要です。これらを本を通じて学ぶことに加えて、実務を行うのですから学習効果は絶大です。

③自社の数字を把握し、財務状況を理解できる。

決算手続きで数字のチェックを行うと自社の財務状況も自然と頭に入ってきます。毎月の試算表を自社で作成することは容易ですし、納税予測も立てられます。今後の資金繰りを立案する際にもここで把握した数字を判断材料として活用できます。数字に強ければ銀行借入れの際にも有利に働くでしょう。

デメリット

必要知識の習得に膨大な時間が必要となる。

仕訳入力に手間がかかる。

税理士とのコミュニケーションが負担となる。

上記のデメリットを以下で説明します。

①必要知識の習得に膨大な時間が必須となる。

法人決算を自分で行うためには広範な税務会計知識が必要です。税理士試験でいうところの簿記論、財務諸表論、法人税法、消費税法の学習が必須となります。

実務で法人決算をやるのであれば、これらの分野について少なくとも100時間程度の学習が必要です。

②仕訳入力に手間がかかる。

法人決算となると、どんなに小規模であっても年間で数百件以上の仕訳入力を行わなければなりません。たとえ会計ソフトを利用しても膨大な時間と労力がかかります。時間がかかるうえに、慣れない作業のためにミスが出る可能性が高い点は否めません。

仕訳入力はたしかに単純作業で誰でもできるように思えます。しかし、膨大な量となるため門外漢が行うには非効率な作業ともいえます。

③税理士とのコミュニケーションが負担となる。

税理士に依頼したとしても全てを丸投げできるわけではありません。簿記や申告書の作成では様々な判断が求められることもあり、一定のやりとりが必要となります。税理士が税務調査や税務上の判断でよきアドバイザーになってくれるのは事実ですが、コミュニケーションに関しては一定の負担があるでしょう。

負担とリスク

法人決算を自分で行う負担とは?

法人決算を自分で行うためには、税務会計知識の習得から始まり、期中の取引も自分で細かく記録しなければなりません。決算が年1回だけである点を考えると、自力で法人決算を行うのが効率的といえるかどうかは検討が必要です。

法人決算を自分で行うリスクとは?

専門の税理士であっても細かなミスを出してしまうのが法人決算です。正確性を担保しつつ決算手続きを完遂するのは非常に困難でしょう。

門外漢が手続きを行うと想定外のミスを出しかねません。法人決算は銀行融資や各種協力金など利害関係者の目にとまるものです。インターネットで調べただけで乗り切るのは負担も大きいです。

何とか申告できたとしても税務調査によって指摘される可能性があります。誤記や不備があると会社の社会的信用にも響きかねないリスクがあるのです。

決算業務を外注する方法と外注先の種類

決算業務を外注する方法

以前であれば税務会計業務は税理士に依頼するしか方法がありませんでした。しかし、税理士に依頼する場合、代金が高かったり、決算のみの代行は依頼できなかったり、ニーズに応じた対応が難しいのが現実でした。

ところが現在はこのような状況が変わりつつあります。近年増加しているのが事務代行サービスや会計フリーランスです。

事務代行サービス

事務代行サービスとは会計に限らず自社内の事務作業をアウトソーシングできるサービスです。決算はもちろん、記帳代行など経理関係全般を外注できます。

会計フリーランス

会計フリーランスとは高度な会計知識を持った個人です。クラウドソーシングサイトを通じて依頼します。個人で仕事を請け負う形になるので格安かつ柔軟な対応が可能です。もっとも、個人に依頼するために仕事の質の振れ幅が大きいのも事実です。たまたま技量の高いフリーランスに当たれば良いですが、そうでないフリーランスも存在します。利用する場合は慎重な見極めが必要でしょう。

決算業務の外注先3選

①タスカル  

決算はもちろん経理業務全般を依頼できます。専属のディレクターがついてオーダーメイドのサービスを提供します。月額2.5万円から依頼できるのでコスパも良いです。

事務仕事を幅広くカバーしているので自社の事業規模拡大に合わせて依頼する業務を増やすこともできます。格安料金でスピーディーなサービス提供を実現します。

公式サイト

②CasterBiz

幅広いジャンルの事務に対応し、決算の代行も依頼できます。専属のアシスタントがついて業務を徹底サポートします。自社の普段通りのコミュニケーションでやり取りできます。オンラインのストレスも最小限です。

充実したサービス内容ではありますが、価格が高めというのが難点です。最も割安なプランでも月額月額5.5万円からとなっています。高い費用を支払っても充実したサービスを受けたい方向けのサービスです。

公式サイト

③クラウドワークス

アウトソーシングサイトの中では代表的なサービスといえます。会計に限らず、あらゆるジャンルのフリーランスを探すことができます。サイト内にその登録者の評価が数値で表示されており、依頼する際の目安となります。

ただ、実際に利用する場合はあくまでも個人に依頼する形になります。料金が安いのは事実ですが、作業内容や納期について丁寧に指示を出さなければならず、コスパが良いかというと疑問が残るところです。

公式サイト

最後に

法人決算を自分で行うことは不可能ではありません。しかし、自分で法人決算を行う場合、手間と時間がかかるうえに一定の負担とリスクを負わなければなりません。本稿で指摘した点を踏まえて自社にとって適切なリターンがあるかどうか、各々の経営判断に委ねられるところです。

また、最近は決算業務を外注できるサービスが増えています。これらのサービスを利用するのも妥当な選択肢となるでしょう。

いずれにしても財務状況の正確な把握は企業にとって何より重要です。決算手続きをインハウス化するのか、それとも外注するのか、自社の状況に照らして適切に選択することが長期的な財務面の強化につながります。

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