「一人社長」は会社のすべての業務を自分でこなさなければならないため、クライアントからの依頼業務だけでなく、「経費」から「決算」までの会計業務も行わなければなりません。
忙しい依頼業務をこなしながら、会計帳簿から試算表、決算書などといった会計業務をこなすのは非常に負担です。
そのような会計業務を効率的に行うためのツールとして「会計ソフト」があります。特に近年は、「freee会計」「マネーフォワード クラウド会計」「弥生会計 オンライン」といった「クラウド会計ソフト」が台頭しています。
しかしながら、
- 結局どの会計ソフトを選べばよいのかが分からない
- 自分に合った会計ソフトを知りたい
- そもそも「クラウド会計ソフト」って何?
などといった疑問があるかと思います。
この記事ではそのような疑問を解決すべく、「freee会計」「マネーフォワード クラウド会計」「弥生会計 オンライン」の3大クラウド型会計ソフトを比較し、様々な一人社長にとって最適な「クラウド会計ソフト」をご紹介します。
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「クラウド会計ソフト」とは?
各製品をご紹介する前に、まずは「クラウド会計ソフト」とは何かについてご説明します。
「会計ソフト」は収支などの会社のお金の動きを全て管理し、それを集計して決算書作りまでをシステム上で行うことの出来る仕組みです。
そんな中、「会計ソフト」は「インストール型」と「クラウド型」の2種類に大別されます。
インストール型
インストールとは「アプリなどのソフトウェアを自分が使用しているパソコンなどの端末の中に入れて使用する」ことです。パッケージかダウンロードで一度ソフトウェアを購入し、パソコンにインストールすれば、月額料金はかからないような料金設定となっていることが一般的です。
利用しているパソコンや作業場所が決まっている場合はインストール型で十分だと言えます。インストール型の会計ソフトは昔から使用されていることから、クラウド型よりも利用率は依然高いです。株式会社MM総研の2017年時点の法人を対象とした「クラウド会計ソフトの法人導入実態調査」によると、インストール型は8割程度でした。
引用:株式会社MM総研
仮にインターネットに接続していなくても、ソフトウェアを使用できることも特徴のひとつです。しかしながら、法改正など会計処理に影響を及ぼす何らかの変更が生じた場合、手動でアップデートまたは最新バージョンのパッケージをインストールし直さないといけないというデメリットもあります。
クラウド型
クラウド型は、ソフトウェアをパソコンに入れることなく、Chrome、Safari、Microsoft EdgeなどといったWebブラウザ経由で利用するソフトウェアです。そのため、インターネット環境に接続されている前提になります。
料金体系はインストール型のような「売り切り」ではなく、月額又は年額の従量課金が一般的です。
クラウド型の会計ソフトは、インストール型と違い、常に最新の状態を維持しています。そのため、たとえ法改正などが生じた場合でも、利用者は特に意識することなくソフトウェアが利用できます。これは、会計ソフトを提供する会社が保有するサーバ上にソフトウェアが動いており、会計ソフトを提供する会社が常に最新の状態を維持し、利用者は単純にそのサーバを覗きに行っていく、といった構成で成り立っているためです。
もう一つの大きな特長として、複数の端末で内容を共有することが可能な点です。同じIDでログインさえすれば、たとえ別の端末からであったとしても、ログインしたIDの情報で会計処理が可能です。また、クラウド会計ソフトはモバイル対応もされているため、利便性も向上しています。近年はこの利便性が評価されている影響か、クラウド会計ソフトの利用者は急激に増加しています。
クラウド会計ソフトの事業者別シェア
クラウド会計ソフトは上述の「クラウド会計ソフトの法人導入実態調査」によると、会計ソフトを利用している法人のうち、約14.5%の法人がクラウド会計ソフトを利用しています。
そのクラウド会計ソフトでは、「freee会計」「マネーフォワード クラウド会計」「弥生会計 オンライン」が3大クラウド会計ソフトだと言われています。そのように言われている理由を物語っているデータが以下のグラフです。この3大クラウド会計ソフトだけで約7割近くのシェアを取っています。
引用:株式会社MM総研
そのため、クラウド会計ソフトを比較するにはこの3社のソフトを比較すれば間違いないといえます。
freee会計、マネーフォワード クラウド会計、弥生会計 オンラインの基本情報
3大クラウド会計ソフトである「freee会計」「マネーフォワード クラウド会計」「弥生会計 オンライン」について、具体的な違いを比較する前に、まずはそれぞれのサービスについて簡単にご紹介します。
freee会計
「freee会計」は、freee株式会社(以下、freee)が運営する個人事業主や法人向けのクラウド会計ソフトです。法人向け、個人事業主向けそれぞれで複数の料金プランが用意されており、プランごとに使える機能などが異なります。
現在、法人向けのクラウド会計ソフトではシェア1位という実績を誇っています。その人気の高さの理由の一つとしては、「経理業務を限りなく自動化、簡略化させる」というシステム思想が挙げられます。
freee会計は、パソコンだけでなくスマートフォンやタブレットでも利用が可能であるため、例えば経費精算の際は、スマートフォンで撮った領収書の写真をアプリ経由で添付して簡単に申請することが可能です。
また、freeeは金融機関や外部サービスとのシステム連携に非常に力をいれており、APIと呼ばれる仕組みで様々なサービス間でのデータ連携を可能にしてきました。API連携を行うことで、インターネットバンキングやクレジットカード決済の情報が自動でfreee会計に反映されるなど、会計業務が簡単になります。特にfreeeはAPI連携が可能な金融機関の数は他社と比較しても多いことが強みです。ご参考までにfreeeがAPI連携対応している金融口座の一覧はここを参照ください。
マネーフォワード クラウド会計
「マネーフォワード クラウド会計」は株式会社マネーフォワード(以下、マネーフォワード)が運営する法人向けのクラウド会計ソフトです。個人事業主向けには確定申告の作業を効率化するためのソフト「マネーフォワード クラウド確定申告」という名称の別サービスを用意しています、
マネーフォワードでの独自調査によりますと、「マネーフォワード クラウド会計」は2020年度のクラウド会計ソフトの満足度で1位と称しています。具体的には利用者とのチャットやメールでの「サポート」の満足度が95%としており、このサポート体制が当サービスの強みとされています。
マネーフォワードもfreeeよりも数は少ないですが順次様々な金融機関や外部サービスとのAPI連携を広げています。ご参考までにAPI連携している金融機関についてはここをご参照ください。
弥生会計 オンライン
「弥生会計 オンライン」は弥生株式会社(以下、弥生)が運営する法人向けのクラウド会計ソフトです。個人事業主向けのクラウド会計ソフトは「やよいの青色申告 オンライン」「やよいの白色申告 オンライン」、インストール型の会計ソフトは「弥生会計」を展開しており、会計ソフトの領域においては長年の実績を保有しています。この「弥生会計」ブランドの利用者は2人に1人いるといったデータもあり、非常に多くの方に利用されています。
弥生はfreeeやマネーフォワードと比較すると数は少ないですが順次API連携可能な金融機関を広げています。ご参考までにAPI連携している金融機関についてはここをご参照ください。(2021年9月時点)
freee会計、マネーフォワード クラウド会計、弥生会計 オンラインの比較・違い
ここからは各製品のプラン・価格や機能について比較していきます。
freee会計、マネーフォワード クラウド会計、弥生会計 オンラインの価格比較
freee会計、マネーフォワード クラウド会計、弥生会計 オンラインの価格プランを見ていきましょう。
会計ソフト | プラン (基本料金) | 料金 | |
月払い | 年払い | ||
freee会計(※1) | ミニマム | 2,380円/月 | 23,760円/年 |
ベーシック | 4,780円/月 | 47,760円/年 | |
プロフェショナル | 47,760円/月 | 477,600円/年 | |
マネーフォワード クラウド会計(※2) | スモールビジネス | 3,980円/月 | 35,760円/年 |
ビジネス | 5,980円/月 | 59,760円/年 | |
弥生会計 オンライン | 無料体験プラン | 2か月間無料 | |
セルフプラン | なし | 1年目:無料(※3) 2年目以降:26,000円/年 | |
ベーシックプラン | なし | 1年目:15,000円/年(※3)または無料(※4) 2年目以降:30,000円/年 |
※1:お試し期間として30日間無料で利用できます。
※2:お試し期間として1ヶ月間無料で利用できます。
※3:「初年度無料キャンペーン」を適用した場合の料金です。
※4:「起業家応援キャンペーン」を適用した場合の料金です。
freee会計、マネーフォワード クラウド会計には月払いのプランが存在しますが、年間コストは年払いの方が安いため、確実に1年以上利用される場合は年払いを選択されるのが良いでしょう。またお試し体験期間としてfreee会計は30日間、マネーフォワード クラウド会計は1ヶ月間無料で利用することが可能です。
弥生会計 オンラインは月払いプランは存在しないが、2か月間無料の「無料体験プラン」があります。また現在、「初年度無料キャンペーン」や「起業家応援キャンペーン」が実施されており、2021年12月31日(金)までに申し込まれた場合は、1年目の料金が無料になります。なお、「起業家応援キャンペーン」は2016年1月1日以降に法人設立(登記)された方のみが対象です。
freee会計、マネーフォワード クラウド会計、弥生会計 オンラインの機能比較
ここからは各製品の機能的な比較についてご紹介します。
①ソフト内の機能比較
機能 | freee会計 | マネーフォワード クラウド会計 | 弥生会計 オンライン |
銀行口座やクレジットカートとの連携 | ○ (対応されている銀行口座数:約770行) | ○ (対応されている銀行口座数:約100行) | ○ (対応されている銀行口座数:約70行) |
決算書の作成・出力 | ○ | ○ | ○ |
領収書やレシートの自動仕訳 | ○ | ○ | ○ |
請求書の作成 | △ (6枚目以降有料) | ○ | ○ |
サポート(電話) | ミニマム:× ベーシック、プロフェショナル:○ | × | セルフプラン:△(最大2ヶ月利用可) ベーシックプラン:○ |
サポート(メール) | ○ | ○ | セルフプラン:最大2ヶ月利用可 ベーシックプラン:無制限で利用可 |
サポート(チャット) | ○ | ○ | セルフプラン:利用不可 ベーシックプラン:利用可 |
メンバー共有・追加 | ミニマム:3名 ベーシック:無制限 プロフェッショナル:無制限 | 上限なし(5名まで無料) | × (別途ライセンス購入が必要) |
連携サービス | Amazon Airレジ 楽天市場 Square PayPal モバイルSuica など | Airレジ クラウドワークス ランサーズ BASE (ベイス) Square 楽天ペイ など | Airレジ Misoca MoneyLook Zaim ぐるなびPOS+ Moneytree など |
②システム要件
次にシステムの要件についてご紹介します。各製品がスマートフォンアプリに対応しているか否か、パソコン上で動かすためのWebブラウザの対応状況などについて整理しました。
freee会計 | マネーフォワード クラウド会計 | 弥生会計 オンライン | |
スマホアプリの有無 | ○ | ○ | ○ |
スマホアプリ対応OS |
|
|
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クラウドソフト対応Webブラウザ |
|
|
|
対応OS(パソコン) |
|
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freee会計、マネーフォワード クラウド会計、弥生会計 オンラインの詳しい特徴
次に各製品の詳しい特徴について解説します。後述に各製品の特徴を挙げていきますが、各社同様の機能を提供している影響で明確な差が生まれにくくなっているのが現状です。
freee会計:複式簿記を感じさせない操作画面+会計業務の自動化
「freee会計」の大きな特長としては、独特の操作感・ユーザーインターフェース(UI)が挙げられます。帳簿を画面上で入力する際に、複式簿記が不慣れな方にも入力がしやすい工夫がされています。具体的には「ステップUI」と呼ばれる、画面に表示されるガイド・手順どおりに金額の入力や画面を操作していくと、結果的に決算書などが作成できるようになると言った仕組みが用意されています。この機能により、例え会計の知識のない方でも比較的簡単に利用できるのが特徴です。そのような特徴があるがゆえに、従来の会計ソフトに馴染みのある方にとっては多少違和感を覚えるかもしれません。
また、前述のとおりfreeeは数多くの金融機関や業務サービスとのAPI連携に力をいれており、仕訳業務についても人工知能(AI)を活用した自動仕訳を可能としており、手入力を軽減する仕組みを提供しています。
マネーフォワード クラウド会計:従来の会計ソフトに近い画面入力+人事労務の機能も付いてくる
「マネーフォワード クラウド会計」の操作は、freeeと違い、従来の会計ソフトに近い形での画面入力となっており、複式簿記、会計業務を慣れている方も違和感なく使用できることが特徴です。
また、freeeと同様、様々な金融機関や業務サービスとのデータ連携やAIによる自動仕訳に対応しており、具体的には銀行口座やクレジットカードをはじめ、電子マネー、POSレジ、通販サイトなどといった2,400以上の金融関連サービスと連携しています。このような関連サービスと連携することで会計業務の自動化・効率化を図ることが可能です。
さらにマネーフォワード クラウド会計はスモールビジネス、ビジネスのいずれのプランにも、「給与・賞与計算」「社会保険手続きに関わる書類作成」「勤怠管理」などといった人事労務に関する機能が付いてきます。freeeや弥生会計では標準機能として付いてこない機能です。
弥生会計 オンライン:初期導入コストが低い+画面UIが経理・会計に特化
「弥生会計 オンライン」の特長の一つとしては、セルフプランを1年間無料、ベーシックプランを通常の半額の15,000円で利用できる点から初期導入コストが低いことが挙げられます。
もう一つの利点としては、画面がとてもシンプルで経理・会計に特化しているため、従来の経理・会計の経験者の方や複式簿記に慣れていらっしゃる方には利用しやすい製品になっています。freeeやマネーフォワードと同様に銀行明細、クレジットカードなどの取引データ、紙のレシートや領収書のスキャンデータや、オンライン請求書データやPOSレジで入力したお店の売上データを自動で取り込み、AIによる自動仕訳も可能です。
freee会計、マネーフォワード クラウド会計、弥生会計 オンラインの使い分け
こんな一人社長は「freee会計」がオススメ
freeeは会計業務に不慣れな方でも取り扱いやすいUIを提供しているという特長があるうえ、各種サービスとのAPI連携に積極的に行っていることから以下のような一人社長にオススメです。
- 会計業務初心者、複式簿記に馴染みのない方
- 会計業務をとにかく効率化させたい方
こんな一人社長は「マネーフォワード クラウド会計」がオススメ
マネーフォワード クラウド会計は従来の会計ソフトに準じた入力である点や標準で人事労務系の機能が扱えることから以下のような一人社長にオススメです。
- 会計業務や複式簿記に慣れている方
- 後に事業拡大していこうとされている。将来、従業員を雇おうとされている方
こんな一人社長は「弥生会計 オンライン」がオススメ
弥生会計 オンラインは初年度に無料または半額で利用できる点やUIがシンプルである点から以下のような一人社長にオススメです。
- 初期コストを抑えたい
- 複雑な機能は不要だと考える会計業務経験者
クラウド会計ソフトで全ての会計業務を無くせるわけではない
ここまで「freee会計」「マネーフォワード クラウド会計」「弥生会計 オンライン」の3製品を比較しました。これらの製品を用いることにより会計業務を効率化させることは可能ですが、会計業務自体が完全に無くなるわけではありません。そのため、会計業務が負担だと感じている方や、より付加価値を生む業務に注力されたい一人社長にとっては課題の一つであることは変わりません。
そこで、タスカルのオンラインアシストサービスをご活用いただければ、会計業務を代わりにタスカルのスタッフが行うことにより、より付加価値を生む業務に時間を割いていただくことが可能になります。タスカルでは、事務作業から人事・総務、経理、幅広い仕事をオンラインでサポートすることが可能です。当記事でご紹介した「クラウド会計ソフト」を利用できる経理スタッフを提供することが可能ですので、是非ともご活用ください。
